悪い人ははじめから悪い人を名乗ってください

小学校四年生くらいの頃、近所の本屋に自転車に乗って行った帰り、大学生くらいの茶髪のかっこいいお兄さん呼び止められた。

 

あの!って

呼び止められて、すぐそばにあるTSUTAYAへの行き方を聞かれた。

たぶん道聞かれたのはじめてだったのかな、なんか頼りにされて嬉しくて、しっかりと教えた。

そうするとお兄さん、すっかり喜んで、身の上話を始めた。

 

この町に来て日が浅いこと、友達が全然居ないこと。

私は心から同情して、お兄さんの純粋そうなきらきらした目を見ていた。

 

そうしてお兄さんが「よかったら友達になってくれませんか…?」といった。私は喜んで引き受けた。大人に敬語を使われることも、友達になることもはじめてだったからわくわくした。

 

それから、お兄さんは携帯持ってるか聞いてきた。持ってないと答えると家の番号を教えてほしいと言った。番号とかを教えるのはよくない、という学校の教えがいきなり前に出てきた。

私は、番号を教えられない旨を告げるとお兄さんは「そうだよね」と力なく笑って、またね、と言った。

 

帰り道、私は心から申し訳なかった。友達になってって言ってくれたさみしい人を一概に悪いもの扱いした自分が悲しかった。

 

帰ってお母さんに一連の話を告げると、むしろそこまで話をしていたことを怒られた。友達になりたいなんて嘘で、犯罪をするつもりなんだと言った。私はあのとき断ってよかったと思った。世の中、そういうものなんだと理解した。

 

 

 

 

 

何年もたって、私は女子高生になった。

あるひ

名駅でおじさんから「友達になってください」と言われた。

私は「あー…」と少し考えた。

友達、このおじさんはなにかさみしいのかな、大丈夫かな?そう思って「いいですよ」と言った。

そのあとおじさんは「カラオケ行かない?」とにやにや笑っていった。流石に察知して断った。そのあとの友達との予定はあんまり楽しめなかった。

 いま思うと小4からなにも変わってない。

 

それからは私は無視が上手くなった。声をかけられたらとにかく無視。

気が抜けていて答えてしまうと、たいていカラオケ、ホテル、キャバクラスカウト。私ってそんなに下品に見えるのかな、悲しくなる。

 

聖書の話、右翼、左翼、募金、信号待ちで名前を書くやつも全部聞いては、まともに知ろうとしてはいけないのです。それぞれ、これは正しい、悪い、そんなことやってると傷つくのは私なんです。

 

 

本当に友達になりたくて道で声をかける人なんてこの世にいないんです。

 

 

名駅にて。

ひょろっとしたお兄さんが呆然としていた。そうして、横をすぎる私に声をかけた。私は無視をした。

そうして途端に意識が襲ってきた。あの人は、なにか困っているのかもしれない。それなのに悪い人だと勘違いした人々に無視をされ続けている被害者なのかもしれない、と思った。

 

私は道を引き返してお兄さんに「どうしました?」と聞いた。お兄さんは何かの勧誘の話を始めた。私は理解して話を制止して、ごめんなさい、道に迷ったとかなにか困られてるのかと思って聞いたんです、そういうお話なら私は大丈夫ですごめんなさい。と言った。

 

名駅からささしままで歩かないであおなみ線を使います。私には判断しかねて心がクタクタになってしまうので数百円払うのを選びます。

 

 

 

こんなんなのに、人生の時が流れてないような裏側にいて本当に小学生の友達が必要な人、そんな人は何処かにいると思えてしまいます。こんなことを考えているから、弱味につけこまれることが多いんだとわかってはいて、さらに傷ついて自意識過剰になってめんどくさくなるのに、捨てられないんです。

 でも別に私優しいわけじゃないんです。容赦ないです。アルテミスメンタルなんです。

 

 

悪い人ははじめから悪い顔をしてください。悪い人だと名乗ってください。

悪いことがしたいなら悪いことしたいって言ってください。

「友達になりたい」なんて歪めないでください。

だから私たちいつも裏をかくようになってしまいました。