小説

中立を装って介入したいボーイとガール

あーー なるほど、今僕はマウント取られてるんだな。 喫茶店のおだやかな空気と時間の流れ、久々に会った友達の微笑み。 「○○○とかいう活動とかどうなんだろうね、結局自己満でしょ」 ○○○を僕はやっていないけれど、僕がそこに親いことをしているのを彼女は…

淡い死の匂い

例えば、 好きだなあと思っている人とお話ししていて、私が好きだと思っていることが相手に伝わっていて、なお相手も私のことが嫌いじゃないということが、相手との目線から伝わりあってしまったり、 対話をしていて、お互いの話したいことがうまく伝わりあ…

世にでなくては

最近やっと、自分が書きたいものを書くことができるようになってきた。 やっぱり私は小説(フィクション)媒体が一番のびのび書けることがわかったし、何より楽しい!って思えるようになってきた。 小説自体は9才くらいからずっと書いている。でも、ここ何年も…

delcorazon

夕方の空は薄いピンクと紫と水色。 浜辺に建つ、薄紫のシルクでできた、サーカステント。 すぐそばで波打つ海水が甘やかな音をたてて、満ちようとしている。 テントのすこし向こうは、うっそうと繁る南国のジャングル。 ポポポポポ…と何かの生き物が鳴いて、…

心傷

もくもくと湯気が立ち込めるその街は、肉まんの皮のにおいと、剥がれかけの赤の壁、中華鍋で野菜を炒める音で満ちていた。 私は、だぼだぼの服でいつものようにその町へ行って、おかみさんから肉まんをもらったり、道で遊んでいる子供たちの面倒を見たり、鶏…

私が彼女に出会ったのは夏の終わりで、 彼女は私の通う大学の研究員だった。 私が研究室に資料を取りに行くと、彼女は、昨日発掘されたばかりの飛鳥時代の美術品についた土を、リスの毛のブラシで、長いまつげを伏せてはたはたと落としていた。 目が合うと、…